第二回:個人向け3Dプリンターについて①
FDM方式3Dプリンターの選び方
現時点で家庭用の3Dプリンターとしては、手軽さ、価格から言って、FDM方式が主流であると前回書きました。
では購入するとして、設置環境やスペックで注意すべき点はあるのでしょうか?
購入前に知っておきたいことですね。
設置環境の問題
FDM方式のプリンターは、ほとんど家電と同じ感覚で使える安心感がありますが、樹脂を使うと言う点で環境面で心配されることを順に解説してみましょう。
● 制作環境について
おそらく他の方式の3Dプリンターのトラブルの噂を同じようなものとして勘違いしている可能性が高いのですが、よくこれらの設置条件のことを質問されます。強いて言えば動作音のみが家庭で深夜に使うには問題があるかなという程度で、他には問題を感じないのではないかと思います。
● 動作音
プリンターの動作音は、メーカーによってかなりの差があります。意図的に音階を付けているのではないかと思われるほど、体感的にも大きな音がするプリンターもあれば、ホワイトノイズ(すべての周波数成分の強度が同じ雑音 「シャー」と聞こえる雑音)程度にしか音がしないものもあります。
下の動画をご覧ください。3DsystemsのCubeからの動作音をご確認いただけます。
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Cubify®, Cube®, and the 3DS logo are
trademarks of 3D Systems, Inc.
● 匂い
匂いは押し並べてほとんどしません。
プラスチックを溶かすからとか、溶剤を使うのではないかと言う先入観から誤解があるようですが、溶剤類は使用しませんし、よほどの密室で、換気を全くせずに、ずっと動作させ続けるようなことでもなければ気がつかないレベルだと思います。
● 防塵の必要性
ヘッドを予熱する際に、プリロードされたフィラメントが、溶解した細い糸状のプラスチックランナーのように垂れ下がったり、プリント後に若干の端材は出ますが、実際の動作時に周囲に蒔き散らずような粉塵は、原理上発生せず、研磨のための後処理時にしか粉塵は出ません。
● カバーの必要性
上記の理由により、防音用だったり防塵対策用のカバーは、オプション部品扱いで、ほとんどの機種で、カバーを付けて使用することを前提にはしていません。
カバーを付けて使用するのは、強い冷風などが当る場所で、プラスチックの液温が下がったりすることがある場合か、防音目的しか考えられず、普通はそのまま露出した状態で室温利用が可能です。
ランニングコスト
次に気になるランニングコストはどうなんでしょう。
大部分はフィラメント代と電気代と言うことになります。
● フィラメントの供給方法の違い
リール
PLAとABSの二種類が主流であると前回書きましたが、ほとんどのメーカーは1kgリールを幾らと言う設定でリールを購入し、裸のリールを本体側面、または背面のシャフトにさして使用します。1kgリールはメーカー純正品で10800円程度、サードパーティー製品で3000円代から6000円前後のものがあり、テストショットは代用品で、仕上げは純正品でと使い分ける方もいらっしゃいます。
カセット
フィラメントリールをカセットで被覆し、カセット交換の形をとる3Dリンターもありますが、その理由はフィラメントが外気に触れて劣化し、折れやすくなるのを防ぐためと、カセット自体に電気的な接点があり、プリンター側でフィラメント管理をしやすくするためのようです。
左がMakebot社製のReplicator2で使用しているフィラメントです。右が3D Systems社製のCubeのフィラメントです。
注意点
裸のリールでも、それほど頻繁に折れることはありませんので、
ビニール袋等に密封して保管しておきましょう。
普段の使用上で留意する点としては、
また、カセットの場合、取扱いが楽な反面、折れたフィラメントがカセット内に落ちてしまうと再度フィードするためにフィラメントを引き出すことが困難になり、カセット自体を交換しなければならない点や、内容量が定かではない点、サードパーティー製の安価なフィラメントが使えない点など、ランニングコスト面で躊躇される方も多いようです。
簡単安心を採るか、量と質の選択度を優先するかで選ぶと良いでしょう。
● その他
ジェル、シート類
ジェルは一瓶1300円程度で、定着させたい面に薄く塗り伸ばして使うため、かなりの回数使えます。ジェルは水溶性で簡単に水洗いができます。融解したフィラメントがステージに残ることは少なく、残ったとしても剥離は簡単です。シートもかなりの回数の再利用に耐えますが、モデルが大面積で接していると、紙ですので剥離時にシートに穴を空けてしまうことがあります。それでも力任せに剥離してモデル側を壊してしまうより安全です。
剥離用のヘラ
モデル剥離のための専用のフライパン返しのようなヘラもあります。無理矢理、ステージから手でもぎ取ることもできますが、底面がステージに直に密着していると、かなりの力が必要になります。専用のヘラでなくても代用できますので、ヘラ状のものやジェル、シートを利用した方が、形状を壊したりする心配が減ることでしょう。
次回は、熱溶解方式(FDM方式)の性能についてご紹介いたします。