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アダム・カゼック

Shade3D 公式

アダム・カゼック

コンセプトアートやマットペイント(映画撮影用の背景画)のプロフェッショナルであるアダム・カゼック (Adam Kuczek) さんは、2010年からエンターテイメント業界でフリーランスとして活躍しています。
ウォシャウスキー監督の「ジュピター」(2015年)や「クラウド・アトラス」(2012年)といったメジャーなSF映画からインディーズ映画まで、多くの映像作品に関わってきました。
広告キャンペーン、新作ゲームや画期的な仮想現実デバイスなどのさまざまな分野のビジュアルデザインなども手がけています。
彼の作品は Ballistic社の高品質なアート作品集である "Exposé 9" や "Exposé 11"、"Matte Painting 3" などにも紹介されており、最近では "The Universe of Seven" というクロスメディア展開のプロジェクトでメインのコンセプトアーティストを務めています。

 (アダム・カゼックさんのウェブサイトはこちら)

(Theft - By A.Kuczek)

アダムさんは今回、Shade3D社からのインタビュー依頼を快く引き受けてくださいました。Shade 3Dユーザーでもあるアダムさんからいろいろ話を伺いたいと思います。

Shade3D : アダムさんは、どのようにしてアートの道を志すようになったのですか?

アダム : 私は、学校の授業中にスケッチやイラストでノートを一杯にするようなタイプの生徒で、いつも美術が一番好きな教科でした。たぶん、子供のころに映画館でみた「スターウォーズ」三部作や「ネバーエンディングストーリー」、「ウィロー」といった作品に大きな影響を受けたのだと思います。そんな子供のころは、実際に自分が映画製作の道に進むなんて、ティーンエイジャーのときでさえ、思いもよりませんでした。当時はポーランドに住んでいたのですが、コンセプト画とかマットペイント(映画用の背景画)といった仕事について、何も情報がなかったのです。大学に入学したときも、美術専攻の学生といえば、美術研究家になるか建築業界に就職するといった進路しか知られていませんでした。デジタルグラフィックスは黎明期にあり、こうしたデザインを専門に教える学校というものが存在しませんでした。アーティストというのが1人前の職業として認められておらず、学校で美術の先生になるか、ストリートで絵を売る覚悟でなければ選ばない道でした。(構造計算など)数学の知識が必要になる建築は選択肢としては2番目かなと考えていましたが、試験に合格して建築学部で一年過ごしたのち、やはりこうした構造的なものよりもっと創造的な何かを探してそちらに進んでみようと決めたのです。そういう分野が必ずあるはずだという確信がありました。

やがて、英米哲学の学位を得て卒業してから1年後にアジアに行くことにしました。かねてより極東アジアのカルチャーに憧れていたからです。当時、コンピュータ雑誌の付録の2Dや3Dのソフトウェアをちょっと試していたくらいだったですが、2007年に中国にきて初めてコンセプト画という分野があること、それで生計を立てている人々がいるということを知ったのです。そこで、中国の大学で講師を務める傍ら、講義の空き時間を利用して、Photoshopや3Dの研究に真剣に取り組むようになりました。2010年には、作りためた自分の作品をポートフォリオにまとめ、すぐに最初の顧客を獲得することになったのです。こうして私のアーティストとしてのキャリアが始まったのです。

Shade3D : 主に何から影響を受けましたか?

アダム : これには、影響受けることと、インスピレーションを得ること、2つの側面があるかと思います。「影響」とは、自分があるテーマを選ぶきっかけとなったのは何か、ということでしょう。人生におけるごく早い時期にそれは育まれると思います。私はSFが好きなのですが、それは明らかに子供のころにみた映画やコミック、アニメの影響でしょう。こうした子供のころの体験が、自ら新しい物語を生み出し、それを表現する創造力をもった語り部、未来のアーティストを秘かに育んでいくのです。

 一方でインスピレーションを得ることは、より意識的なプロセスです。インターネットのおかげで、今は創造的なアイデアを簡単に得ることができます。ちょっと小耳にはさんだアートブックを手に入れたり、地球の裏側で行われているコンファレンスのライブを見たりといったことが、いとも簡単できてしまう時代です。数えきれないほどのアート作品のウェブサイトがあり、アイデアを得たり、何がトレンドなのかを知ることができます。自分自身が(自分の作品を公開することで)ネットを通じて人々にインスピレーションを与えることもできます。

Shade3D : アーティストの一日とはどのようなものか、教えていただけますか?

アダム : 私はいつもあらかじめ計画を立てておきます。ですから、いざ仕事をはじめてから「え~と、次は何をしたらいいのかな...?」とはなりません。プロジェクトが進行中のときは、特にそれが長期にわたる場合がそうですが、自分がどこまで作業を終えたか、調整が必要な事柄はなにか、次に何をすべきか、といったことをきちんと把握しておかなければなりません。私はいつも、一日の仕事のはじめにもっともクリエイティブでデザイン的な仕事をできるように努めています。たとえば、デザイン画の構成を決めたり、デザインアイデアの着想に努めるのです。こうして最も困難な部分を最初にクリアしておけば、残りの時間はリラックスして、それらを洗練させるなどの作業に集中できるのです。気持ちがフレッシュな最初の時間に、集中してエネルギーを注ぐことが大切です。クリエイティブなアーティストがつい長時間仕事をしてしまう(それはだいたい時間管理に問題があることが原因ですが)ことがありますが、働く時間が長くなるほど、よいアイデアや解決策を思いつくことが難しくなってしまいます。締切に間に合わせるためだけに働く機械のようになっているのです。

傍から見ているとそうは見えないかもしれませんが、クリエイティブな作業は実はとても疲れるのです。大きなプロジェクトの場合など、数か月に渡って作業が続くことになります。毎日毎日、よいアイデアを生み出していくのは容易なことではありません。ですから、適切な時間管理や、リソース管理、目標の設定、効率的な作業の流れやペース配分はとても重要なのです。最初はやる気とアイデアに満ちていても、数週間ハードワークを続けているうちに、しまいには工場の労働者になったような気がするかもしれません。燃え尽き症候群に陥ってしまわないように気を付けなければなりません。

Shade3D : アダムさんは「ジュピター」や 「クラウド・アトラス」(共にウォシャウスキー監督の映画作品) といったヒット作を手掛けてらっしゃいますよね?大きなプロジェクトに携わるときは、いつもどういったアプローチをとりますか?

アダム : たいてい、まずは依頼者から簡単な説明があります。ラフな構想レベルのときもあれば、プロジェクトがすでに細部まで詰められた段階のこともあります。他のアーティストの制作物が既にあり、作品内で用いられるデザインのスタイルや要素などの方向性が決まっていれば、そのコンセプトにマッチした、それをさらに発展させるようなデザインを提示するようにベストを尽くします。これはとても重要なスキルです。このスキルがないと、おのおののデザインがまるで別のストーリーに属するように見えてしまい、コンセプトに統一性がなくなります。

技術的な側面からいいますと、私個人の作業フローはプロジェクトごとに少し異なっています。新しいソフトウェアの登場で、同じ作業がいままでより簡単に早くできるようになることで、これまでの作業フローが変わることもあります。変わらないのは、私はいつも紙とペンで始めるというところです。デジタルだけですべての作業フローをこなすアーティストもいますが、私は紙の上に、なるべくシンプルにスケッチすることを好んでいます。解像度やブラシタイプ、レイヤーといったことを気に掛ける必要がありません。一番自然な気持ちで描けますし、私のアイデアのほとんどはこうした紙とペンから生まれているんです。次のステップはテーマや持ち時間により異なります。紙に書いたアイデアスケッチをスキャンしてPhotoshopに取り込んで、そこからデジタルで作業をすることもありますが、最近はPhotoshopと併用しながら、Shade 3DやZBrushといった3D環境で直接デザインを完成させることが多くなりました。3D形状に、写真から取り込んだイメージ、それにデジタルペインティングを組み合わせるのが、私の定番のスタイルです。

たまに気分を変えるために、いつもとは違うソフトウェアを使ってみたり、全く異なるテクニックを試してみることもあります。手慣れたアプローチを変えてみることで、いつも使うツールでは制作できないタイプの新しい形状やデザインを生み出すことができるかもしれません。例えば、一味違う個性的なテクスチャを作成するために様々なタイプのフラクタルジェネレータを試しています。人間の想像力では到底思いつかないようなテクスチャやシルエットに出会うまで、パラメータをいろいろ変更して形状を自動生成してみたりします。

Shade3D : プロジェクトが始まってから、どのタイミングで3Dでの作業に移行しますか?また、あなたの作品の中のどの部分に3Dを取り入れるかどうやって決めていますか?

アダム : 制作したいものの全体のイメージがつかめたら、早い段階で3Dでの作業に移行します。3D環境は、シーンのレイアウトを決めるのにとても便利です。構成要素をシーン内に自由に配置して、さまざまなアングルから確認することができます。登場人物や乗り物、小道具その他を含めたシーン全体のデザインコンセプトを任されることもありますが、もし紙に描くだけだったら気の遠くなるような作業が、3Dツールがあればうんと楽に行えます。

3Dカメラもとても便利ですね。カメラのフレーム内に収まっていなければならない要素について細かい指定を受けることがありますが、要素の数が多いとそれらを構成して要求を満たしていくのはとても込み入った作業になることがあります。3Dカメラを使えば、完璧なカメラのフレーミングを見つけるまで、焦点距離や各要素の配置やスケールを調整していくことができます。もはや、この作業は3Dカメラなしには行えないと言えるほどです。


Shade3D : Shade 3Dを使うようになったきっかけを教えてください。

アダム : アニメ作品を鑑賞していてShade 3Dのことを知りました。非常にタイトなトゥーンレンダリングをしている人がいて、すごいなと思ったのです。驚くべきことに、巷の多くの3Dソフトウェアがいまだにトゥーンレンダリングの品質で苦労しています。のちにShade 3Dを試す機会があり、多くの便利な機能を備えていることが分かりました。しばらくShade 3Dを試してみて分かったことは、操作がとても直観的で「居心地のいい」ソフトウェアだなということです。

Shade3D : Shade 3Dのどこが気に入ってますか?

アダム : 簡単に使えるのに、とてもパワフルなところです。個人的に気に入っているところがいくつがあります。まずは、動作が安定していて、ハイポリゴンでも容易に操作ができるところ。たとえば、ZBrushからスカルプトで生成した重いポリゴンデータをインポートしても、編集や複製などをちゃんと行えます。最近、ある凝ったコンセプトの作品のために軍隊列を作成しなければなかったのですが、形状をインポートしていくと、シーン内のポリゴン数は最終的には2200万個にまで膨れ上がってしまいました。それでも、Shade 3Dはこの隊列の調整とレンダリングを問題なくこなしました。

Shade 3Dは私が必要とするさまざまなフォーマットのデータのインポートをサポートしています。これも良い点ですね。表面材質関連も素晴らしいですね - 一か所にまとめられたスライダー群で様々なパラメータを調整することができます。コンセプトワークなどの用途にも、とても便利にできています。ユニークな表面材質の設定をすばやく行うことができます。ディスプレイスメントマッピング、リプリケータ、ボリュームマッピングといった機能なども気に入っています。ほぼすべてのコマンドのショートカットをカスタマイズできるところもよいですね。その他いろいろ、よい機能がありますね。

Shade3D : これからの Shade 3Dに望むものは何ですか?

アダム : 制作のプロセスを自動化したり、省力化するようなポリゴンモデリング用のツールの充実が望まれますね。それと、カスタムパイメニューのような機能が追加されると、ショートカットに依存しなくても作業の効率があがるので、実装されるとうれしいですね。

Shade3D : ご存知のように、株式会社Shade3Dは日本の会社です。あなたの仕事に影響を与えたような日本のカルチャーはありますか?

アダム : このインタビューの最初で、極東アジアにずっと興味があったと言いましたけど、それは日本のことなのです。ファイナルファンタジーとか日本のコンピュータゲームが好きでした。日本のテレビ番組やJポップなどにも親しみました。実は、ポーランドにいたとき日本語を勉強していて、日本語能力試験などにも合格しています。ほんとうは日本に来て英語を教えたかったのですが、結局叶いませんでした。その代わりに中国にきて、もう8年にもなります。でも、機会があったらぜひ日本に行ってみたいですね。

アジアの影響については、私の作品集(ポートフォリオ)を見ると分かります。「クラウドアトラス」と(そこに登場する都市)ネオソウルなど、私のこれまでのさまざまな作品には日本や中国的な要素が織り込まれています。個人的な好みをさておいても、SFやサイバーパンク分野、「攻殻機動隊」や「アキラ」といったカルトな作品の舞台は日本の都市だったり、アジアカルチャーに関連した要素が含まれているのです。

Shade3D : もし、あなたのようなキャリアをめざす若いアーティスト達に何か1つアドバイスしてあげるとしたら?

アダム : 何を目指しているかにもよりますが、特定の映画制作スタジオのコンセプトアーティストとして働きたいなら、そのスタジオの趣向に沿ったポートフォリオを準備しておくことですね(けれども、ただの趣味の域ではなくて、新しいものを生み出せる才能があることをアピールできなければなりません)。フリーランスで働きたいならば、依頼主にとってできるだけ魅力的に見えるような自分の見せ方を心得ておく必要があります。つまり、器用で万能なことが求められるのです。さまざまなツールやテクニックに精通し、依頼主が何を求めて来ても対応できるということが必要です。もしも、コンセプトをプレゼンテーションするときに、ちゃんと仕上げられた3Dモデルを使うことを求められたら?もちろん、こうした要求に対応できなければいけません。シークエンスのストーリーボードを見てみたいと言われたら?どうやってそれを用意し、顧客にプレゼンするか勉強しておかねばなりません。実際に動きのあるシーンを見せることを求められたときは?カメラやオブジェクトのアニメーション設定をして、レンダリングしてクリップ映像をエクスポートできるようにしておきます。知識とスキルを身に付ければ付けるほど、あなたは依頼主にとって貴重な存在となるのです。なぜなら、プロジェクトを実行するために他の人を雇わなくてもよいのですから。近年、フリーランサー達にとって、いわゆるコンセプトアートの制作は、こなすべき仕事の一つにすぎなくなっています。

Shade3D : リリース間近の何かエキサイティングなプロジェクトありますか?

アダム : 最近アナウンスされたばかりなのですが、ゲームと書籍で展開される "The Universe of Seven"(以下U7)という作品の制作に2014年から携わっています。ファンタジーとテクノロジーのミックスされた世界観です。ちょっとファイナルファンタジーっぽいですが、多くの革新的なアイデアとオリジナリティあふれるゲームが楽しめます。この U7 のコアはRPGシューティングゲームの "Fall of Kyos" がベースになっています。メインのコンセプトアーティストとしての私の仕事は、舞台設定やキャラクタ、乗り物や小道具などのゲームのビジュアルコンセプトをデザインすることです。提示したコンセプトを実際のゲームに落とし込むために、開発チームにストーリーボードやスケッチ、レイアウトなども提供しています。

 このプロジェクトでは、Shade 3Dを使ってコンセプト画像をすでに何点か作成しています。U7 の世界を開発するときの私の作業フローに、これからもShade 3Dは欠かすことができません。以下のウェブサイトで U7 プロジェクトの最新アートワークや情報を載せていますので、是非ご覧ください。
("The Universe of Seven" のウェブサイトは www.uof7.com)

Shade 3Dを活用しているプロジェクトとしては、私のオリジナルプロジェクトである"Razordome"があります。これはインタラクティブアートブックとしてリリース予定です。このプロジェクトにはマンガやコミックスタイルのアートワークが多数含まれており、主にShadeのトゥーンレンダリングやレンダリングのオプションを駆使して制作しています。最初は、すべて手書きで進めて、その間にトゥーンシェーダの使い方、どのようなスタイルをレンダーできるか調べようと思っていました。じきにアートワークをいくつかお見せできると思います。

Shade3D : アダムさん、お話しありがとうございました!(Shade 3DのWalkthrough Tutorial Videosも素晴らしい出来ですね!)、Shade 3Dのスタッフに何かメッセージはありますか?

アダム : Shade 3Dは素晴らしいツールなので、これからも期待しています。Shade 3Dのチュートリアルをこれからも作っていきますよ。時間があるときに、もっといろいろなチュートリアルを用意するつもりです。Shade 3Dについて紹介したいことがまだたくさんありますよ。

(アダムさんのチュートリアルビデオページ(英語) "Adam Kuczek's Walkthrough Videos" はこちら)

インタビュアー:Lauri Caravaca, 翻訳:Shunsuke Takamura
原文(英語)のインタビューはこちら

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