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セミナーレポート:建築と3Dプリンターセミナー(後編)

Shade3D 公式

セミナーレポート:建築と3Dプリンターセミナー(後編)

昨年12月にマイナビセミナールームにて開催された「建築と3Dプリンターセミナー」のダイジェストです。
今回は、その第2弾。杉山 貴伸さんのShade 3Dからの3Dプリント初体験の感想談などを伺います。また、後半は3Dプリントからデジタルファブリケーション全般に造詣が深いしぶや図工室の平本知樹さんにご登場いただき、3Dプリントの可能性について語っていただきました。

セミナー司会(MC) : 株式会社マイナビ 国領 雄二郎氏


スタジオに併設 MAIL BOXES ETC.のカウンター

テスト:左右に配置は、文章の前に画像の<DIV XXX><img></DIV>タグ。

スタジオに併設 MAIL BOXES ETC.のカウンター

テスト:左右に配置は、文章の前に画像の<DIV XXX><img></DIV>タグ。


センター 左右の幅 最大616px??

マイナビ国領氏(左)とライフサイズ杉山氏(右)

MC:今回、コルビジェのシェーズロングを3Dプリントしていただいたわけですが、3Dプリントは初めてですか?

杉山:イーフロンティアのスタッフの方に手伝っていただきましたが、初めての体験ですね。

MC:どうでした?

杉山:3Dプリンター用のデータとして作っていなくても、 3Dプリント用のデータに変換できるのがいいですね。 エクスポートからSTLを選んで出力するだけで良いのですから...。
3Dプリントのサービスビューローへ持って行ったのですが、 ファイルを開いて書き出すだけなら3分で済んでしまいます。

MC:今回は、最近テレビCMでも話題のDMMさんで出力されたそうですが、仕上がりはどうでしたか?

杉山:びっくりしました。結構細いパイプとかも綺麗に出るんですね。仕上がりは大変満足しています。

ル・コルビジェ:シーズロングの3Dプリント
杉山氏がShade 3Dでデータを作成し、
DMM3Dプリント様のご協力で出力したもの

MC:プリントサービスの料金はどの程度なんですか?

杉山:エラー訂正の修正費とスケールにもよるようですが、この椅子で1万程度だと思います。 エラーが無い完全データで、3Dプリンターの種類を撰ぶと、もっと安くもプリントできるようですよ。 4~5,000円でもプリントできるんではないでしょうか。

そこで、そのエラー訂正なんですが、朗報があるんですよ。 今回の形状をSTLに書き出すと約50万ポリゴンほどになっているんですが、 その中に2,000箇所のエラーが出ると修正も大変ですよね。
でも12月11日に発表予定の新しいShade 3D ver.14.1 アップデータでは、 自動修復してくれる機能が搭載されるとのことで、これは凄いことになる予感がしているんです。

この手のエラー修正ソフトはこれまで150万とかしていましたので、 1万円しないBasic版にも搭載されるなんてShade 3Dユーザーにとっては嬉しいですよね。
しかもShade 3D ver.14のユーザーには無償バージョンアップらしいですし...。 入稿前に完全データにできれば、サービスビューローでのプリント代も安く済みますし、 家庭用の3Dプリンターでのテストショットの利用も進みますよね。

MC:そうなんですか。従来とは制作環境も変わりつつあるんですね。 モックアップ(模型)で見たがるお客さんに3Dプリントと言うのは有効ですか?

杉山:空間デザインの場合、家具の提案もありますので、3Dプリントで見せると言うのは非常に有効ですね。 映像より具体的ですし。

MC:建築見本の制作に関して、手作業と3Dプリントでは費用や時間などのコスト面では、 どちらが有効なのでしょうか。

杉山:今の時点で既に3Dプリントの方が費用はかかりません。
8cm角のものが5,000円くらいで出力できますしね。
模型を実際に手作りしても1~2日はかかりますし、材料費や人件費を考えると、もっと高くつきます。
それからすると、3Dプリントは3Dプリンターが動いている数時間で済みますし、 待っている間に他のことができますからね。

MC:業界で同じように3Dプリントをしている方はいらっしゃいますか?

杉山:まだ業界内ではそういう動きはありません。
一度にプリントできるサイズが小さいということもありますが、それは部分に分けて組み立てればどうにでもなる話ですし...。
これは先にやった所が勝ちなんでしょうね。 模型も外注に出すと数十万かかったりしますから。
それほどの値段をかけられない案件でも、模型が出て来たら施主は嬉しくないですか?
設計事務所の規模とは関係無く、3Dプリンターがあればできることでもありますし...。

MC:3Dプリンターには、そう言う利用の仕方もあるんですね。


しぶや図工室 平本 知樹氏



しぶや図工室のワークショップ 時間割

MC:それでは、ここから先はもう1人の講師の方をお呼びしてお話を進めてみたいと思います。
3Dプリント事情に詳しいしぶや図工室の平本知樹さんです。

平本:よろしくお願いします。
まず、しぶや図工室について簡単にご紹介させてください。
様々な3Dプリントを行なうかたわらで、3Dプリントに関する体験学習や普及活動もやっている施設です。
先程の家具の例で言うと、今ちょうど3分の1の模型を作っていたりします。

MC:3分の1と言うとかなり大きいですね。プリントの時間とかもかかるんではありませんか?

平本:6時間程度ですね。

MC:では、3Dプリントの現状と今後についてどうお考えですか?

平本:今は3Dプリンターは個人でも買えますからね。10~20万円で購入できるんですから安くなりました。今後トライする人は増えるのではないかと思います。
また、最近はオンライン3Dプリントサービスの会社もたくさんできましたね。
でも、周辺環境は揃ったんですけど、肝心の出力データが足りないんですね。
プリントするには3Dのデータが必要なんです。
そのためには、3Dスキャナを使うと言う手もあるんですが、既にあるものしかスキャンできませんし、 インプットの正否が未知数な部分もあります。
黒いものや物陰になる部分はスキャンできませんし...。
そのデータの編集時間も、ものによっては数時間と大変な作業量がまだあります。
オリジナルな形状データを作るためには3DCGソフトやCADがやはり必要なんですね。

皆さん3DCGと言うと難しいと言うイメージがあると思うんですが、 小学生に少し教えると、 意外と大人よりも簡単に壁を超えてしまいます。
たとえばカブト虫のメスをスキャンした3Dデータを渡して、これをオスにしてみてと言うと、 大人が苦労しているのに、こんなものを作ったりするんです。
子供への3DCGの教育と言うのは大切だと思います。

MC:新しいものづくりの方法としての3Dプリンターの可能性についてはどうでしょう?

平本:積層造形という作り方自体が新しいですからね。
デジタルファブリケーションのとしての3Dプリンターに注目しています。
それは、ソフトウエアで"ものづくり"と言うことですからね。

すでに曲面が作れる、着色できると言うところはクリアされていて、今後の課題として、素材もコンクリートでプリントできたりといった研究が進められています。

実物のスケールで、人が載っても大丈夫な建築構造体だったり、 3Dプリンターじゃないとできない造形と言うのも今後有望だと思います。

実際には大きなスケールを作るほど時間がかかったり、まだ解決しなければならない点は多いのですが、 それでも世界中で大きなものを3Dプリンターで完成させる動きが活発になっています。

MC:例として拝見させていただいたものは、アート作品なのでしょうか? それとも実用的なものなのでしょうか?

平本:まだ難しい分野で、出力された数が少ないので、作品と呼ばれてしまいますが、いろんな実例が増えて来ています。
例えばWiki Houseと言うプロジェクトがあって、ユニット別にレゴブロックのように展開図を構築し、2×4工法のように組み立てる家のプランを出して、そのユニットの木を削る機械も実際にあったりします。

また、従来のようなデザイナー側からの提案ではなく、消費者が簡単なUIで、 カスタマイズしたデザインのパターンを作ることができるWebサイトがもうすでにあって、 アクセサリーなどを実際に発注できたりもします。 
例えば、3Dプリンターのステージの中に、折り曲げて出力することができるドレスがあるのですが、 実際にプリントする前に、クロスシミュレータで動かして、着用した際に美しく見えるデザインを検討したり...

このアクセサリーなどは、103ドルで、納期は2週間ちょっとです。

素材も様々なものが選べます。 銀細工などでは、3Dプリンターでワックス型を作って、シルバーを流し込んで作る動きもあります。

でも、そうなると材料を知らないとまずいことも当然起きます。 パン切り包丁で刺身を切る料理人がいないのと同じです。
アメリカでは3.5平方cmのアクセサリのようなものを78ドルで出力できるようですので、 この銀の指輪は1万円ぐらいで手に入るんですよ。
材質としては、その他にスチール、セラミック、ポリアミドなども既にありますので、 なおさら材料の特性を知らないと立体のプリントは難しくなっています。 一般の方だと沢山プリントして経験値が必要と言うことですね。 そう言う出力機はまだ非常に高価ですし、 だったら業者に発注してしまおうと言うことなのでしょう。

3Dプリンターを購入して、学習してまで何かを作りたいと言うモチベーションが無い人には、 海外からでも配送料が2,000円程度でプリントしたものを送ってくれます。
3D
データを出力サービスのサイトにアップロードして、クレジットカードでオーダーと言う世界が既にあるので、 それを利用するのもよいでしょう。

ただ、アップロードした形状データにエラーが出たりすると、カード決済のキャンセル手続きが英語では非常に面倒だったりするかもしれません。国内のサービスビューローでもエラーは無い方が歓迎されますからね。

MC:平本さんは、3年以上前に組立式の3Dプリンターを個人で入手するなど、 日本では早くから3Dプリントに取り組まれている方です。
詳しくためになるお話をどうもありがとうございました。

この後、杉山さんと平本さんへ質問がある方を募って、質問会になりました。 杉本さんの素晴らしいパースの照明に関する質問や、 平本さんからは、3Dプリンターで現地出力することで物流が変わるのではないかと言う説明など、 とても興味深い内容のお話が続きました。

最後に恒例のプレゼント抽選会があり、今回もマイナビの講習会は盛況の内に終わりました。
今年も数々のセミナーが行なわれます。読者の皆さんもぜひご参加ください。

セミナー当日の会場風景

杉山 貴伸
1978年大阪府出身。建築設計・空間プロデュース事業などを主軸とした総合計画事務所(株)ライフサイズ代表取締役。
執筆活動や、大学・専門学校で講師等も勤める他、海外(特にアジア圏)での3DCAD、3DCG技術教育なども行っている。
著書に「Shade+CAD 建築&インテリアプレゼンテーション」「VectorWorks+Design」(いずれもBNN新社)等がある。

平本知樹
1987年兵庫県出身。慶應義塾大学SFC 政策・メディア研究科 エクスデザイン専攻修士課程修了。?構造設計事務所勤務の後、株式会社prsmを共同設立。しぶや図工室の企画・運営を行う。著書に「僕らの未来を変えるマシン『3Dプリンタ』知る編」、同 使う編など。

~しぶや図工室より~
しぶや図工室ではまた個人で買うことができない高精度の3Dスキャナや3Dモデラを揃え、みんなで使えるようにしています。また、使えるようにするだけでなく、それらを使いこなすためのワークショップを開催しております。

    ★SPECIAL THANKS!★  

     DMM3Dプリント様

    今回のセミナーで参考事例として作成したル・コルビジェのシェーズロング3Dプリント(トップ画像)は、DMM3Dプリント様に出力していただきました。
    DMM3Dプリント様の高性能3Dプリンターによって、シェーズロングの細いフレームも美しく再現できていました。

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