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Shade 3Dユーザーインタビュー③ ライフサイズ杉山貴伸

Shade3D 公式

Shade 3Dユーザーインタビュー③ ライフサイズ杉山貴伸

 

今回は、一級建築事務所「株式会社ライフサイズ」で代表取締役を務められている杉山貴伸氏にお話を伺いに行きました。建築やインテリアなどの設計業務で長い間、Shadeをお使いいただいているユーザーの方です。Shadeの昔のエピソードから具体的な機能のご意見など、Shadeに関するお話を伺いました。


Q:まず読者の方へ簡単なご経歴をご紹介ください

建築系の大学院を卒業し、24歳で組織系の建築設計事務所に入りました。規模でマンションやホテル等の建築設計をやっている数十人規模の会社だったのですが、そこでShadeを使っていたのが仕事の経歴で言うと最初になります。27歳の時にある出版社から「Shade+CAD」と言う本の執筆依頼が来まして、会社に承諾を得て勤務の傍ら執筆という形で過ごしていました。そして28歳の時に退社・独立しまして、30歳の時に会社を法人化し現在に至っています。現在34歳ですので会社は5期目に入っていますね。

Q:28から30歳の、独立して会社を設立されるまでの間はどうされていたんですか?

最初は一人だったんですが、「株式会社ライフサイズ」を設立する時に、合流した大学院時代の同窓生がいまして、2年ほどの間は、彼が週末に会社に来て一緒に仕事をするというスタイルをとっていました。

株式会社ライフサイズのオフィス風景

Q:その時の仕事はどんな事を手がけられていたのですか?

独立した最初の頃は、本当に仕事がなくて、Shadeの本を書いたり、専門学校の講師をしたりしていました。29歳の時に、母校の大学から非常勤講師として呼ばれて、大学でShadeを教えたりもしました。現在も京都の大学などで教えたりしていますが、当時はそうした講師業をしながら、小さい内装設計案件やCGパースの制作などをしていました。

Q:現在のお仕事はどんな事を?

おおきくわけて2つの仕事をやっています。

ひとつは建築設計・空間デザイン業務です。 これは「あらゆる空間に価値を―」をキーワードに、住宅も、店舗も、オフィスも、展示会も、空間デザインに関わる全ての仕事をやっています。あらゆる空間に対応できることを目的にしていますで、それらの仕事の受注割合は大体均等になるようにしています。住宅だけに特化したりすると、「あらゆる空間に―」とは言えなくなりますので(笑)。 もうひとつはCADや3DCGパースの制作業務です、これはShadeでのCGパースの制作経験やShadeマニュアルの執筆経験の延長上にある仕事ですね。

手掛けられた建築設計・空間デザイン作品の一部

Q:杉山さん自身は営業とかもされるんですか?

もちろんやります。今は優秀な営業スタッフも居てくれていますけどね。パース制作は私が事務所の中で一番うまいと自分では思い込んでいる(笑)ので、パースは今でもたまに描くことがあります。スタッフも増えて来たので、今は僕がCGパースを教えて、これからは彼らがパースを描くようにしているところなんですよ。

Q:それらの業務でShadeを使われているのですか?

そうですね、多くの業務でShadeを使っています。昔だとプレゼンの段階で、3DCGパースが無くてもよかったのですが、今は3DCGパースがあって当たり前ですからね。もともとサラリーマン時代に、年間200枚位CGパースを描いていたんですよ。でも当時CGパースが設計事務所内で作れるとなると、他に作れる人がいないから、それこそ吐くほど描かされると言うか、寝る時間がないほど描くことになります。これではだめだと思って、自分以外もパースを描けるようにと、Shadeのノウハウをノートにまとめていたんです。26歳くらいの時、そのノートの内容をShadeでの建築3DCGパース制作のノウハウとして自分のホームページに載せていたら、ある出版社の編集者の方から「Shadeで建築パースを描くためのマニュアルを書いてみませんか」と依頼が来たんです。どうしようか迷ったんですが、そこで出来上がった本さえ渡せば、会社でスタッフに教えなくても良いし、 「一石二鳥だ」と思って請けたのが、Shadeの本を書いたきっかけです(笑)。

杉山氏が執筆した参考書籍

「Shade+CAD [改訂版] -建築&インテリアパース速成ガイド」

「VectorWorks+Design[改訂版] -建築デザイナーのためのVectorWorks実践ガイド」

Q:その頃CGパースをやっている人は多かったんですか?

僕が3DCGパースを始めたのは15年くらい前で、そのころは学生でした。当時はまだ設計課題でも、実際の設計の仕事で3DCGパースを出すところはほとんどなかったみたいですね。趣味でやっている人は多かったですが建築業界ではまだまだパースにCGを使う人は少なかったです。その頃はまだ建築3DCGパースに関する資料がほとんど無かったんですよ。何冊かの建築3DCGパースの作品の載った書籍とCAD&CGマガジンと言う素晴らしい雑誌がありましたね。今はもう休刊になってますけど…。
その雑誌で3DCGソフトが紹介されているんですが、みんな80万円以上するソフトばかりで、学生だった自分には手が出なかったんです。唯一、広告に出ていたShade Debutだけが確か4万円くらいだったので「これなら買える!」と思ったんです。それが19歳の時でしたので、Shadeで3DCGパースを始めたのはその頃ですね。で、大学の設計課題のパース表現に使ってみようと試行錯誤しながらやってみると、けっこううまく出来てしまって(笑)。当時は設計課題で3DCGパースを出す生徒なんて一人も居なかったですから、手描きで描いてる同期の学生からは「反則だ!」とか言われたんですけどね。今は反対に手描きで設計課題のパースを描く生徒なんてほとんどいないですが・・・(笑)。僕は当時から将来3DCGパースが当たり前になると確信していました。

Shadeを始めた当初の作品の数々

Q:Shadeを選ばれた理由は価格の面だけですか?

そうですね、それも大きな理由のひとつです。当時学生だった僕にはShadeしか買えなかったですから。あとは、Shadeで描くパースのクオリティの高さです。当時Shadeの広告画像に楽器を演奏している木のデッサン人形のCGがあって、その空気感というか、クオリティがとても高かったんですよ。その室内の造作等も見て、これなら建築パースに最適だと思ったんです。

Q:Shadeの習得は簡単でしたか?

正直難しかったです(笑)。習得のために、いろいろと参考本を探したんですけど、なかなか思い通りのものは無くて、ふと付属のチュートリアルの本を見てみると、知りたい要点がまとめて書いてあって、意外とこれでいいんじゃないかと思ったんですよ。なので、当時のShadeに付いていたチュートリアルの本をボロボロになるまで読みました。その後、色んなガイドブックとか読みましたけど付属マニュアルが一番分かりやすかったですね。

Q:その当時のShadeの印象ってどうだったんですか?

めちゃくちゃストイックなソフトだなっていうのが最初の印象ですね。まず説明がない(笑)今はアイコンの下にこれは何のコマンドだって名称付いていますけど、当時はアイコンだけで、その下の表記すら無かったんですよ。なんと言うハードなソフトだと思いましたね。ユーザーを突き放すと言うか、付いてい来れるんだったら付いて来たら?というスタンス(笑)。でも、使いこなせるようになると、そうじゃないんだと思うようになりましたね。ようするに手になじむように無駄を最大までそぎ落としているんです。

今でも馴染めばはまるソフトですけど、初めての人は何がなんだかわからないソフトなんでしょうね。私も初めはCADとの違いに合点がいかなくて、以前の開発元のエクスツールスに、「端点スナップは無いのか」と、はがきで質問を送った事があるんですよ。そしたら御丁寧にも開発部門から返事が来たんですよ。「端点スナップは、CADとは違って自由なモデリングを楽しむCGソフトとして敢えて入れてない」って…。そしたらその後Shade8位で早速端点スナップ機能付いてしまったんですね。開発の方からしたら、余計な事言いやがってみたいな、口うるさいユーザーの一人だったんでしょうね。

Q:現在、Shadeはどのバージョンをお使いですか?

Shade 13を使ってますよ。12とかでもUIも含めてかなり変わったけど、13はいいですね!。プレビューレンダリングも早くなってるし、何よりも数値入力がやりやすいのが助かってます。スケールガイドも付いてますしね。これ意外と必要なんですよ。言ってみれば、実務者にとって、痒い所に手が届くと言うか…。

バージョンアップのときに、開発元からしたら地味な機能改善は売り込みにくいでしょうけど、使っている方からしたら凄い助かりますからね。インターフェースは10年使っていたら10年使い続ける重要な部分だし…。あとは、色補正のポストレタッチ処理は凄いですね。レンダリングした後に色調整できるなんて以前は夢でしたから。

Q:Shadeから他のソフトへ浮気しない理由とかありますか?

今まで他のソフトも使ってみて、なかでも専門性に特化したソフトは、制作スピードなどの面でメリットはありました。でも、Shadeはやれる事が多いと言うか、自由度が大きいんですよ。恐竜とか人物とかも作れるソフトで建築パースを作る… Shadeは凄い汎用性が高いんですよね。自分で恐竜は作ろうとは思わないけど(笑)自分で好き勝手に3Dイメージを作れるソフトとして、ストイックだけど鉛筆みたいに自由に使えるところが良いと思います。日本人は出刃包丁だけで桂剥きでも何でもやってしまいますが、欧米人はパン用の専用の包丁があったりしますよね。CGソフトを道具としてみたときに、全ての3DCG制作に応用が効くShadeは日本の包丁に似ています。日本人が作ったソフトだからでしょうか。これからもこのスタンスで行って欲しいですね。

Q :フォトリアルなイメージパースは描かれますか?

ずいぶん昔に、ShadeのCGパースでコンペの賞を取ったこともあるんですよ。当時は、コンペでもCGのパースは少なかったですね。で、その時期からしばらくはフォトリアルをやりたかったんですね。「凄い!」と言われたかったのもあるのですが、その後フォトリアルは辞めました。現実より先にフォトリアルを見せると、想像させる余地を消してしまうんですね。今は手描きをより綺麗にしたCGパースと言うのを目指しています。

Q:フォトリアルはもう目指さなくなられたんですか?

というより、うまく使い分けていかないと空間デザインの仕事の場合、モノを作る楽しみや感動がフォトリアルなCGで薄くなる可能性があるかもしれない。それともうひとつ、例えば提案段階でフォトリアルなパースを提出したあと、竣工した物件のディテールがCGパースと少し違っていたとして、クライアントから「何でここ少し違うの?」ってもしも言われたとしたら、フォトリアルなCGパースを指して「これイメージですから」とは言いにくいじゃないですか(笑)。それでトラブルになった事はないけれど、私達は実物を作るのが仕事であって、パースは相手にイメージを伝えるためのコミュニケーションの手段だと思うんです。だから普段は、クライアントにイメージを伝える事のみに専念してパースを描いています。そう言う意味で、使い分けが大事だと思います。パース制作だけを請けてクライアントにフォトリアルを求められている時は、とことんフォトリアルに走ります。それでも、そのクライアントにもお客さまがいらっしゃる限り、同じ問題に行き着くのではないかと思います。

Shadeで作成されたフォトリアルなCG画像

Q:杉山さんの空間デザインのポリシーは?

そうですね、まずその空間にふさわしいデザインを行うということでしょうか。住宅には住宅、店舗には店舗にふさわしいデザインがあります。
目的の違いもありますよね。住宅の場合は、クライアントにより多種多様です。クライアントごとに違う生活スタイルを上手くデザインに組み入れないとクライアントの心地よい空間にはなりません。また、店舗の場合でも、オーナーさんの自由で作っては駄目な事が多いんです。店舗にはお客さんが来ますので、ビジネスとして成立しないと駄目なんですね。オフィスも社長の思惑で作っては駄目ですよね。従業員がそこで勤めるステータス感が必要な場合もあるでしょうし、そのオフィスに来られたお客さまの抱く印象というのもあります。IT系の企業にはそれなりの雰囲気がないと(笑)、野暮ったくては困るでしょう。今はライフスタイルもワークスタイルも多様化して、色んなオーダーがありますからね。SOHOやコワーキングはもちろん、オフィスにカフェのようなオープンスペースを併設して欲しいと言うオーダーやミュージアムを併設したいというオーダーも入るんですよ。全てのジャンルを請け負っているからこそ作ることができるオーダーもあるんです。

株式会社ライフサイズが手掛けた空間デザイン実績の一部

Q:そういったお仕事でのShadeを使う意義とは?

一瞬で住宅のパースが作れるソフトもありますが、私たちの業務では、住宅パースしか作れないでは困るんです。まず、そういうソフトのほとんどはモデリングが弱い。Shadeには正直ライブラリに気の利いた形状は入っていませんが、何でもできてしまうところが凄く重要です。ユーザーを突き放してはいるが、縛られないので、私たちの業務には合っていると思いますね。ゼロから作っていかないといけないので、その分大変ですが大抵の場合クライアントの要望も、空間を作る目的も案件ごとに違いますからね。

画像左列:Shadeで作ったプレゼン段階のイメージ 

画像右列:完成した物件の写真

 

 

Q:今後のShadeに対する要望をお聞かせください。

最近は建築設計業界でもウォークスルーアニメーションを要望される事が多くなりました。カメラパスを作ればShadeでもできるんですが、まだアニメーション初心者には難しいと思うんです。簡単なウォークスルー用のカメラツールを搭載してくれればと思います。特に初心者にはカメラの設定とアニメーションの設定を行うシーケンスを作る工程が難しいんです。設計者が簡単に設定できる方法があればいいですね。もちろんShadeにも、エイムコンストレイツとかインバースキネマティクスとかアニメーションに便利な機能が付いたのは知っているんですが、そんな小難しい機能を付ける位なら、その勢いでウォークスルーを簡単にしてくれと(笑)。カメラと壁との衝突判定をしてくれたり、視線高さをキープする機能だとか、平面パスを描くだけでカメラが歩いてくれたりしたら嬉しいです。それが付いたら、多分建築設計事務所は喜ぶでしょうね。ある程度自分のパスが決まったら、各部屋の自動露出補正をしてくれたりライティングを調整してくれたりすると助かります。

Q:これから始める人にアドバイスとかありますか?

初めからWebや雑誌で見るような素晴らしいCGパースを描くのは無理があると思います。素晴らしい作品と言うのは、それなりの積み重ねがあってできるものですから。まずは今のレベルで出来るものを少しづずつ焦らず作ってみるのがいいと思いますよ。ただの立方体でいいので、綺麗に作ってみる。シンプルなものから始めて、ライティングやカメラ設定のクセをつかむまでどんどん作っていく。そうしているうちに、実はシンプルなパースも、複雑なパースも実は根っこの部分で同じだっていうことに気づくはずです。それに気づいたらすぐに上達します。これから始める人には、ライブラリも充実してUIも素晴らしいShade 13はグッドチョイスだと思います。

お忙しい中、貴重な時間を割いていただきありがとうございました。


Shade 3Dについてご興味がある方は、無料体験版を用意していますのでぜひご利用ください。

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